OMEN

・OMEN/監督:リチャード・ドナー
    主演:グレゴリー・ペックリー・レミック

「ある外交官とその妻に一人の子供が生まれた。しかしその子供は生まれてまもなく死んでしまう。妻を思いやった夫は、身寄りの無い子供を秘密裏に引き取り、彼の子供として育てる。やがて時がたつと、その子供の周りで不吉な出来事が次々とおこる。預言者・首吊り・犬・写真、キリストと悪魔の戦い。」

久しぶりに品のあるホラーを見た気がします。
結末を考えると、エクソシストとは対極にある映画でしょうか。(エクソシストが品が無いって言ってるわけじゃないですヨ)
グレゴリー・ペックのやつれていく姿や、子供の何気ない表情に対する恐怖など、ストーリーが進むにつれて、登場人物に対して観客が抱くイメージ・印象がめまぐるしく変化する(させられずにはいられない)という点で秀逸でした。
注文をつけるとするならば、以前サスペリアについて書いたときにも触れたんですが、恐怖シーン・残虐シーンが起こる前におどろおどろしい音楽を入れるのが僕の感覚的には受け入れがたい。
和製ホラーの恐怖って、静けさの中から這い上がってくる感じがしません?それに対して、西洋の恐怖って音楽や映像で煽って煽ってみたいなところがあるから、逆にさめちゃうんですよね。最近の作品なんかでは、こういう点はあまり目だたないんですけど、さすがにこの位古い作品ともなるとまだまだそういうところが見受けられて、個人的にはそこが残念だったかなと。
評価:☆☆★★★(星2つ半)


以下若干ネタばれはいります。
特別版を見たんで、映像特典として監督のインタビューが入ってて、その中で彼はこう言っているのです。
「この映画は宗教関係者にとっては攻撃の対象になるだろう。最終的に悪が善に勝ってしまうのだから。しかし、それはみるものによってはということだ。私はこの映画でひとりの狂気にとらわれた父親と、その子供の運命を描いたものだからだ。」(かなり意訳してます)

まあなんだろ、確かに宗教的な理由でのバッシングを避けるためにはこういう逃げ道をあらかじめ作っておく必要があったのかもしれないけど。ぶっちゃけそれはないよ、って思います。
作中で、明らかに子供・乳母・犬は邪悪なものとして描かれていたし、父親であるグレゴリー・ペックが自分の子供(正確には養子ですが)が悪魔の子であり、殺さねばならないという結論にいたるまでには、数え切れないほどの葛藤を経験しているわけですし、実際そこにこそ、この映画のすばらしさ、そしてそれを見るものに伝えることに成功したグレゴリー・ペックという俳優の力量があらわれていると思います。
監督のメイキングにおける発言は、そういった映画の良さをすべて陳腐化させ、しらけさせることになってると思うんですよね。

でも確かに宗教をテーマに据えて描くのは大変だと思います。
宗教が題材の映画っていうと、今はパッションとかジャンヌダルクベン・ハーとかぐらいしか浮かんでこないんですけど、やっぱりそれぞれの作品が、ある程度宗教的な(ここでは全部キリスト教だけど)尊厳を維持するレベルを保とうとしているのが見て取れますしね)